私はかれこれ20年以上前、公立小学校から中学受験を経験しました。
その結果、幸い第一志望の中高一貫校に合格し、進学。
今では大人になって2児の母となりました。
自分が受験していたころは、なんとなくこの学校に行きたいと思い、がんばって勉強し、特に何も考えずに歩いてきました。
しかし中学受験で得たものはたくさんありますが、失ったものもたくさんある、と大人になってから気づいたのも事実です。
今度は親としての立場から中学受験を考えるにあたって、中学受験しないことのメリット、したことのメリットをまとめました。
お子さんの中学受験をご検討中の方の参考になれば幸いです。
なお、今回書いた内容は、主に偏差値50以上で、塾に通って受験する私立中学受験に当てはまる内容です。
おかしくなる?中学受験のデメリット
- 小学生時代が勉強漬けになる
- 成績至上主義の世界で過ごす
- 地元の友達との関係が希薄になりやすい
- 金銭感覚の基準がおかしくなる
- 中学入学後に燃え尽きやすい
- 親の金銭的負担が大きい
実際に中学受験を経験し、親になった私が考える、中学受験のデメリットはこのようなポイントです。
たくさんありますね。
一つずつ解説させてください。
小学校時代が勉強漬けになる
中学受験では公立小学校で習うよりはるかに難易度の高い問題が出されるため、塾に通う子供がほとんどです。
塾に通う頻度は家庭によりますが、私の記憶では、小学校6年生になる頃には週3〜4日は塾に通っていました。
これは私が特に多かったわけではなく、周りの子供も同じくらいだったはずです。
また、夏休みや冬休みなどの長期休みになると、集中特訓が入り、さらに塾に入り浸るようになります。
印象深いのは、大晦日合宿です。
受験直前に家族そろってグダグダしてしまうのを避けるため、大晦日から1月2日くらいまで近隣ビジネスホテルに泊まりこみで勉強合宿が行われていました。
今から思うと、先生も大変…
さらに、塾のない日でも気を抜かないよう、出される宿題は大量、かつすぐに解けるようなものではありません。
学年が上がるにつれて宿題の量もどんどん増えていき、私も夜12時ごろまでかかって塾の宿題に取り組んでいました。
中学受験するとなると、1日5時間も10時間も勉強するのですから、その他にできることはかなり限られてきます。
- それまでがんばっていた習い事
- 友達とあそぶ時間
- 家族のおでかけ
私が6年生の冬「家族旅行に行くので塾を1日休みます」と連絡したところ、塾の先生に本気で心配されたのを覚えています。
こう書くと、小学生にそんなに勉強させていいのか?!と心配になりますよね。
もし子供が勉強ギライなのであれば、他を犠牲にしてまでこんなに勉強するのはあまり良いことではないかもしれません。
途中で勉強好きになればもちろんいいんですけどね。
中学受験をしない場合、以下のような自由が得られます。
- 体をうごかして遊べる
- 習い事や趣味に全力をつくせる
- テストの点で測れない、興味を追求できる
- 友だちとの遊び時間が持てる
最近はテストの点などではかることのできない能力「非認知能力」を伸ばすことが大事、とも言われていますし、小学校高学年を勉強づけで過ごすよりも有意義な過ごし方もあるでしょう。
成績至上主義の世界で過ごす
中学受験の塾に通っていると、成績で全てのヒエラルキーが決まります。
私の通っていた塾では、テストの成績順で教室内の席順が決まることで、イヤでも自分の成績を自覚させられます。
その結果、成績さえよければいい、という成績至上主義に染まりやすくなります。
勉強合宿では成績順に細かく教室が分けられ、それぞれの名前と志望校が教室の外にはり出されます。
自分と同じ志望校の子が上のクラスに固まっていると、いかに自分がダメな存在か、突きつけられたような気分になります。
このように子供の成績で何かと差をつけるのは、大手学習塾では多く取り入れられている手法のようです。
塾も商売です。
成績上位の子供に特にがんばってもらい、良い受験結果(塾の成果)を出してもらうには効果的な方法ですからね。
- すべてが成績順になりヒエラルキーがはっきりする
- 成績の良いクラス・子どもが優遇される
- 成績下位では手厚いサポートは受けられない
一方、小学校では成績によってロコツに優劣をつけることはありません。
そして、小学校と中学受験用の学習塾では、勉強の中身も全く違います。
小学校で学ぶ内容は中学受験組からすれば基礎中の基礎。
対して、中学受験の問題はそれなりに勉強してきた大人でも解けないような難問も多いです。
普段からそんな難問に挑戦している中学受験組は、小学校の授業の問題くらいなら余裕で解けるようになります。
私は塾に通った結果、以下のように、頭のおかしな子供になりました。
- 学校の授業内容をバカにする
- 学校の先生は実は勉強できないのでは?と考える
- クラスの他の子供より自分は優れていると考える
はい、すみません。
本当にすみません。
でも、今から思い返すとこんな子供でした…
今この頃の自分に会えたら、5時間くらい説教してやりたいです。
学校の授業内容は、中学受験で塾に通っている子供からするとかなりカンタンです。
私の通っていた小学校では中学受験する子どもが少なかったので、自然と成績上位になれました。
どや顔で発言したり、テストで余裕で100点取れたりするのが気持ち良い…
表面上は先生や友だちにも気に入られるよう取り繕っていましたが、学校の勉強を心の中ではバカにする、私は本当に嫌なヤツでした。
私は特に運動神経も良くなかったので、他にすがれるものもなく、余計に成績至上主義に取り憑かれてしまったのでしょう。
今から思えば、塾では全然良い点数が取れず、上には上がいることを思い知ってしまったコンプレックスの裏返しでした。
もちろん、中学受験で塾に通う全員が私のような偏った子供になるわけではありません!
まっすぐな心を持ったまま、成績向上を目指す子供もたくさんいるでしょう。
ただ、私のようにゆがんだ気持ちを持ってしまう子供もいます。
中学受験向けの塾に通わなければ、そこまで成績を気にしすぎることもないでしょうし、極端な成績至上主義に飲まれることはないでしょう。
- 成績以外の判断基準が多い
- 成績の優劣で、目に見える待遇は変わらない
- 受験はまだ先なので、成績に固執しすぎない
地元の友だちとの関係が希薄になりやすい
中学受験をすると、家から離れた中学校に通うケースが多いでしょう。
そうするとどうしても地元の友人とは疎遠になってしまいます。
私自身も中学高校は電車に乗って通っていたので、小学校時代の友人とはめっきり遊ばなくなってしまいました。
成人式では8年ぶりに地元のイベントに参加するようなものだったので、すごく緊張して参加したのを覚えています。
幸い、疎遠だった私をみんな暖かく迎えてくれたので楽しく過ごせましたが…
やはり地元の友人のつながりの話を聞くと、少しうらやましく思ってしまうのは正直なところです。
公立中学に進学すれば、地元の友人と深くつながれるでしょう。
金銭感覚の基準がおかしくなる
受験用の塾や私立中学校に通うにはお金がかかりますので、経済的に余裕のある人ばかりです。
私のいた私立中学では、信じられないほどのお金持ちがわんさかいました。
- 中学生でも化粧品や財布などはブランド物が多い
- 参観日、母親たちのバッグはエルメスのバーキン(100万円超のカバン)だらけ
- 遊びに行く時にお小遣い1万円以上持ってくる子が多数いる
- マンション持ってる=マンション1棟持ってる
- ブラックカードを持っている子供もいる
- 別荘を持っているのは全く珍しくない
今から思い返すとすごいですね!
これは私の住んでいた地域にハデ好きが多かったことや、女子校だったことも関係しているかもしれません。
我が家も中学から私立に通わせてもらっていたので、経済的に困っていた訳では無いのですが、当時は本気で「我が家は貧乏だ」思っていました。
ただ、私立中学を擁護しておくと、ドラマや漫画でよくあるような、貧乏人いじめはありませんでしたよ。
本当にお金持ちな人にとっては、自分たちの世界が普通なだけです。
お金が無いからと他を貶めたりすることはありませんでした。
あと、こういう派手な層が目立ってしまうだけで、一般に近い層の方も多いです。
ただ、お金持ち層は目立ちますし、良いものをたくさん持っているので、それが普通なのかと感じてしまうことが多々ありました。
ただ、元々の性格なのか、自分の家の経済状況を受け入れていたからか、
「私もブランドものがほしい」
「お金持ちがうらやましい」
と私が感じたことは不思議とありませんでしたが…
中高時代の金銭感覚は世間一般からすると普通ではなかった、と気づくのにはしばらくかかりました。
超高所得者層ばかりの中で、感覚がズレてしまうのは仕方のないことでしょう。
その点、公立中学に進学すると、金銭面でも思想面でも、いろんな人が集まっています。
多様な価値観を学ぶことができ、一部の世界にとらわれることもなく、世間から大きくズレてしまうこともないでしょう。
中学入学後に燃え尽きやすい
公立中学入学後は、高校受験を見据えて「これからがんばろう」という気持ちを持つ人も多いでしょう。
しかし、中学受験を経て私立中学に入学すると、受験合格という目標達成を果たしてしまった人ばかりです。
運良く実力以上の学校に入学できた私は、完全に勉強面でのやる気は燃え尽きました。
そして勉強せず、職員室で「あいつは宿題を出さない」と話題になるほどに宿題すらせず、日々あそんで過ごしました。
友人とテスト点数の低い自慢をし合っていたあたり、本当にダメな生徒の見本のようでした。
若干12歳にして大きな山場を超えてしまうと、その後の精神を保つのは、甘ったれた私には無理でした。
親の金銭的負担が大きい
一番わかりやすい、中学受験のデメリットは金銭面です。
中学受験のためには小学4年生から専門の塾に通うのが一般的。
小学4年生から塾に通い、かかる費用は塾の学費だけで200万円とも、その他かかる費用も全て合わせると400万円超とも言われています。
また、かかるお金は合格して終わりではありません。
晴れて私立中学に進学が決まった場合、そのまま私立高校に進む人がおおいでしょう。
ベネッセによると、私立中高に進んだ場合では6年間でだいたい780万円から、最大1080万円ほど費用がかかるそうです。
さらに私の通っていた私立中高を思い返すと、PTAの集まりが高級レストランだったり、高校の卒業パーティ会場が一流ホテルだったりと、書かれている以上に、何かとお金のかかることは多かったはずです。
受験前にかかる費用から私立中高に通う費用まで考えると、莫大な金額がかかります。
この金額を無理して出してしまうと、他にしわ寄せが行きかねません。
公立中学に進み、その分使わずにすんだお金を他の教育に回すこともできますし、日常をより充実させることで家族みんなの精神的な余裕につながるかもしれません。
私立中学に合格したらゴール!
…では全くないので、長期的な視点で、本当に私立中学受験をする金銭的余裕があるのか、見極める必要があります。
中学受験するメリット
今まで、中学受験のデメリットについて書き続けてきました。
じゃあ中学受験しない方がよかったか?
と聞かれると、
私は中学受験してよかった
と答えます。
その理由はこちらです。
- 勉強の面白さを知れる
- 中学校を選べる
- 高校受験免除になる場合が多い
- 大学受験に向けた勉強ができる
勉強の面白さを知れる
中学受験する一番の魅力はこれだと私は考えています。
中学受験に向けた学習塾では、教える先生もその教科のプロばかりです。
深い知識と、小学生の興味を惹きつける話し方は見事で、「勉強って面白い!」と初めて知ったのは塾の先生のおかげです。
塾で授業を受けることは純粋に楽しかったので、1日ずっと塾にいても不満はなく、楽しく過ごせました。
塾のクラスメイトとは戦友のような感覚になり、外で学校の友人と遊ばなくても何も気になりませんでした。
勉強すれば解ける問題が増え、成績も上がる。
困難なゲームに取り組んでいるような感覚でした。
この時に感じた「勉強は面白い」という感覚は大人になっても変わらず残っている、私にとって中学受験最大のメリットでした。
塾側も生徒の成績を上げることに必死なので、生徒の成績を上げられない先生、生徒からの評判が悪い先生はどんどん下位クラスに下げられていた印象です…
それによって上位クラスには生徒人気も高く、実力もある先生が集められることになります。
当時は「そんなもんか」と思っていましたが、親になって考えると、なんとも言えない制度ですね…
中学校を選べる
多様な人が集まり、学校の先生も何年かごとにローテーションされる公立中学とは違い、私立中学はその学校独自に力を入れている分野があります。
私が進んだ私立中学では英語に力を入れており、各地域の英語ネイティブの先生が何人もいて、当時にしては珍しくフォニックスなども学びました。
先生もひとくせあるような、実力派の先生が揃っており、質問に行くと予想以上の答えを返してくれました。
なぜか「中学からは英語をやりたい」と漠然と思っていた私にとっては最高の環境でした。
親、もしくは子供自身で興味や性格に合った学校を、選ぶことができるのも、中学受験のメリットです。
高校受験免除になる場合が多い
中学受験を経て私立中学に入学したら、高校受験を免除になる場合が多いです。
私の学校も、中学に入学できればほぼ100%高校にはそのまま進めました。
そのため、中学入学後、2年間はたっぷりダラダラさせてもらいましたが、その後ふとやる気を取り戻し、なんとか次の大学受験には間に合いました。
ここで高校受験があればとても間に合わなかったと思います。
小学校で勉強づけの日々を過ごした分、中学時代から高校時代にかけて部活に精を出すこともできますし、興味を突き詰めることもできます。
私はただ毎日たのしくすごしていました
大学受験に向けた勉強ができる
中高一貫校であれば、中学入学後から大学受験に向けた勉強ができます。
高校受験がない分、本来決められている勉強内容を少し早めに終わらせ、残りの時間で大学受験に向けた対策ができます。
私の通っていた中高は進学校ではありませんでしたが、高校2年生のうちに高校3年間分の授業内容が終わっていました。
進学校では、もっと進度の早い学校もたくさんあるようです。
私も中学3年生でふと勉強にやる気をだしたのは、大学受験するならそろそろ真面目にやらないとヤバイかな、と気づいたからです。
中学生の時から大学受験を意識できたのは、中高一貫校だったからでしょう。
それまで散々ダラダラした分、切り替えて真面目に勉強するようになり、無事、希望の大学に合格することができました。
大学受験に向けての体制を整えやすいのも、最初に中学受験を終えていたからです。
就職活動(SPIなど)に有利
中学受験の経験は、なんと就職活動にも役立ちます。
大学も半ばをすぎ、いよいよ就職活動となったら大抵の人が受けるのがSPIなどのテストです。
大抵の会社(特に大企業)では、就活生たちの能力を測るために「SPI」に代表されるようなテストを受けさせます。
その問題は、大学入試のような問題ではなく、頭のやわらかさを測るような問題が多いです。
中学受験を乗り越えた人は、この就活テストを得意とするタイプが多いです。
就職活動時の問題は、中学受験の問題に似ているものも多いですし、なにより問題を解くための頭の使い方が似ています。
残念ながら、私は日常生活でパッとすぐにひらめくタイプではなく、そんなに頭の回転が早い方ではないと思います…
こういう日常的な頭の回転って本当に学歴関係ないよね
そんな私でも就職活動の際、この手のテストでは対策しなくても全く苦労しませんでした。
これは中学受験の時にさんざん勉強した成果かなと当時から感じていました。
中学受験にはメリットもデメリットも大きい
このように、実際に中学受験を経験して大人になり、親として改めて中学受験というものを考えてみると、メリットもデメリットも大きなことが分かります。
中学受験は親の負担も大きい、と言われますが、それは私の親に聞いてみたところ
なにもしなかったから、特に大変じゃなかった
という答えが返ってきたのでここでは入れませんでした。
私の親は、一切勉強面でサポートをしない親だったので…
お子さんの興味ややる気、各家庭の経済状況、お住いの地域、行きたい学校があるかなど、様々な状況を考慮して、中学受験をするかしないか、親子で決めてくださいね。
最終的に選んだ道が、その子にとって一番良い道でありますように、願っています。
中学受験を知る、超オススメ本
最後に、漫画オタクなので、おすすめ漫画を紹介させてください。
中学受験をテーマにした「二月の勝者」という漫画があります。
柳楽優弥さん主演でドラマ化しているので、ご存じの方も多いでしょうが…
これ…めちゃくちゃ面白いです!
20年以上前の中学受験塾事情から変わらないことも多く、
あるある〜
と当時を思い出しながら読みました。
思わず二度見してしまう、インパクト大なセリフのオンパレードです。
以下、名言のほんの一部をご紹介します。
- 君たちが合格できたのは、父親の「経済力」、そして母親の「狂気」
- 受験塾は子供の将来を売る場所です
- 凡人こそ中学受験すべき
- 子供に「課金」してクソ強いキャラに育てよーとして何が悪い。(中略)課金ゲー上等!!
出典:二月の勝者
中学受験の裏側や、塾事情を気軽に知るには最適です。
私はそんなこと関係なくても面白すぎて一気読みしてしまいましたが…
私はebookjapanという電子書籍サイトを使って読んでいます。
無料の試し読みで「母親の狂気」の名言部分も読めます。
ハマっちゃうこと間違いなしです。